巣鴨地蔵通り商店街にて、Port B公演「一方通行路ーサルタヒコへの旅」に行く。前にも別の集団から、観客が町を歩く中でパフォーマンスが進行していく公演の案内を頂いたことがあるが、その時は時間が合わず、場所も遠かったので諦めた記憶がある。今回のPort B公演では、TIF(東京国際芸術祭)の期間中、何度もお世話になり見知ったはずの巣鴨の商店街で、自分の足だけで歩くのとは全く異なる体験をさせてもらった。まず耳にイヤフォンを付け、そこから流れてくる指示に従って商店街を歩き、ともすると見落としてしまいそうな小さな人形館や美術館に足を踏み入れる。建物の中に入ると、人形作家のおばさんや画家のおじさんが劇団員にインタビューを受けているらしき声が流れてくる。時々、空き地やお店の前に団員が待機しており、そこでこちらはいくつかの質問を受け、それに答えなければならない。そして街歩きの中盤、私たち観客は自分自身の姿や声をなぜか町中で目にし、耳にするというびっくりするような仕掛けが施されている。

街歩きをパフォーマンスに組みこむ、という作業は、よく管理された観光になってしまう怖さと、観客が何かを見る、聞く、感じることの範囲を広げる、あるいは狭めるという可能性との両方を含んでいると思う。今回は、敢えてイヤフォンガイドが「一方通行」になっていることで、つまり戻る道筋の選択が観客に任されていることで、「管理済みの観光」から逃れ、後者のほうに街が開かれていたと思う。この復路を、他の場所にも持ち帰りたいと思う。